ミニバン・マルチワゴン・ステーションワゴン・キャブオーバー
ミニバンの規格や技術的な定義は存在しないが、一般的には、スペース効率を上げて座席数を確保するため着座姿勢が立ち気味(アップライト)で、全長に対する室内長と室内高は比較的大きい。欧州ではMPV、ピープルムーバー、モノスペースとよばれる場合が多い。
「ミニ」バンと呼ばれるものの、日本において、この場合の「ミニ」という語には大きさを表す意味はすでに無い[1]。また、「バン」も、日本の感覚の貨物車であるライトバンを表している訳ではなく、英語の「箱型車体」に由来している。
シルエットでは、1.5BOX、2BOX、ワンモーションとも言われる形状でもあり、販売戦略上、商用車との混同を避けてきたため、キャブオーバータイプのいわゆるワンボックスカーとは区別されている。日本での車検証の記載はステーションワゴンとなる。
3列目にシート(サードシート)を備え、それをセールスポイントとしている車種が多い[2]。
日本車での3列シートの配置は、1列目がセパレートシート、2・3列目を3人がけのベンチシートとした8人乗り、2列目をキャプテンシート(セパレート)+3列目を3人がけベンチシートとした7人乗り、2列目を3人がけベンチシート+3列目を2人がけのベンチシートとした7人乗りのいずれかが多い。このほか、アメリカ車では、3列すべてがベンチシートのものや、欧州車では、すべてが独立シートのものも存在する。

1994年に登入されたホンダオデッセイはメーカーの思惑以上に購入者に大きく受け入れられ販売を伸ばした。このため日本市場向けにメーカー各社はオデッセイ仕様とも呼べるタイプの車両の開発販売を急いだ。他のメーカーの同型車も販売は好調となり、乗用車の市場は激変した。これが契機となりミニバンが一般的なファミリーカーとして定着することとなった。ブームは自動車メーカーや自動車業界関係者の予想を大きく上回った。いままでの日本ではここまで大型の車両が販売の主力になるとは考えられなかった。当初トヨタもホンダもそれぞれが独自の呼び名で宣伝に努めミニバンという呼称は正式には使用していなかった。大きなカテゴリーとなったこの一群を一言で言い表すカテゴリー名が必要とされた。自動車ジャーナリズムはアメリカ発のミニバンという語を盛んに使用し、やがて日本のメーカーが正式採用するに及び、日本特有の状況が加味されたカテゴリー名となった。ミニバン販売数が乗用車販売の第一位となり、ミニバンはセダンにかわり日本のファミリーカーの主役の座となった。ミニバンが普及したため、広い荷室をもちながらも乗り心地よく人を運べる車両がこなれた価格となった。このため、寝台車や身体障害者や高齢者を乗せる福祉車両などのベース車として使用されるようになった。時代の要請から福祉車両の個人購入が広まっており、ミニバンはその中心的な車両カテゴリーでもある。
全てのミニバンに共通して存在しているものがボンネットである。自動車にボンネットがあるのは当たり前と思われるかもしれないが、1990年代前半までは3列目シートを備える車はボンネットの無いキャブオーバースタイルが当たり前だった。しかしキャブオーバーは“エンジンが前席床下にあることによって床面が高くなり、乗り降りしづらい”、“セダン等と運転感覚が大きく異なる”、“前席と後席が隔離され、ウォークスルーが困難”、“エンジンの騒音が酷い”、“前面衝突安全性に問題”、“ホイールベースが短く、操縦安定性に劣る”とデメリットが多かった。ミニバンはボンネットを備え、前輪を前に出すことで、キャブオーバーの持つデメリットを全て解消した。しかし、スペース効率の点ではキャブオーバーに及ばない。セダンに比べると一般的に、重量バランスが悪く燃費や乗り心地、走行性能が悪く、また、静粛性や安全性も劣るが、3列目を備える事で多人数乗車できることと荷物等も載せやすいことから一気に普及した。
FRのキャブオーバー車に比べ、FFのミニバンは床が低く、おのずと車高も低くなる。ホンダ・オデッセイ(3代目)やホンダ・ストリーム(2代目)、トヨタ・マークXジオのように1,550mm以下の車種もあるが、ほとんどのミニバンは、一般的な立体駐車場のケージの制限高である1,550mmを超える。

天井を高くする事で乗員の姿勢を立たせ、一人当たりの占有面積を減らしている。アップライトなドライビングポジションの視点は、セダンよりも高くなる。高さにより、見晴らしがよく開放感を持つことが出来るが、人間の視野というものが、左右方向には広く、上下方向にはかなり狭いため、直近の低い位置の物体に対して認識が少なくなる傾向がある。このため特にこれらの特性を認識し意識的に視線の移動を行わないと幼児等の身長の低い存在に対する認知が遅れやすく、また走行中も前走車がセダン等の自車より車高の低い車の場合、車間距離が少なめとなりやすいため注意が必要である。

直近視界の改善のため、サイドアンダーミラーやCCDカメラによるモニタリングが考案された。

キャブオーバー
運転席(cabin:キャビン)がエンジンの上にある(over:オーバー)形式の車両の総称で、COEと略されることも多い。
スポーツワゴン
ボディ形状はステーションワゴンもしくは5ドアハッチバックと同じ開口部の大きい後部扉を持つスタイルで、多くは2列シートの5人乗りである。いわゆる4ナンバー登録の貨物車であるライトバンに類似する。しかし最近は、スポーティーイメージを重視する傾向から、これらとは別に5ドアハッチバック形式のものが主流となってきた。動力性能・運動性能を高め、タイヤやサスペンション、ブレーキについてもいわゆるスポーツグレードのものを装備し重心も低めにすることで、スポーティーイメージを意図しているが、運動性能の向上に特化したスポーツカーに比べればおのずと限界があり、車種によっては積載力からワゴンを名乗ることに疑問を呈するものも数多い。良く言えば5ドアハッチバックの実用と娯楽の両立であるが、悪く言えば妥協の産物とも言える。ベースとなったセダンモデルを有するモデルも数多い。

高回転で高出力を発揮するエンジンを搭載した製品が多数派である。なお、現在登録されているターボ車の最大派閥は実はこのジャンルである。

ステーションワゴン
ステーションワゴンは、大まかには3ボックスセダンの屋根をトランク後端部まで伸ばし、その屋根とショルダーラインとの間にもガラスとピラー(柱)を入れてトランク部を大きな荷室としたものということができる。しかし、ハッチバックタイプとの明確なデザイン上の区別は難しく、メーカーや時代によっても基準は分かれる。また、車検証での'車体の形状'の表記種別の一つでもあり、トヨタ・イプサム等一般的にミニバンと認識されている車両も車検記載上はステーションワゴンとして扱われる。ステーションワゴン以外にはセダン、クーペ、ミニバンなどがある。

車高や全長はセダンと同程度で、後部座席後ろの荷室は、後部座席をたためば更に大きな荷物を載せることができる。このため日本のかつてのステーションワゴンは荷物を載せて運ぶライトバンとほぼ同じもののように見られていた。

しかし、趣味的な利用の増加によって優れた居住性や高いドライバビリティを持ったステーションワゴンが登場し、現在では、積載能力にも配慮しつつ上質な性能を持つものとして認識されている。

走行性能、居住性、積載能力、駐車場での取り回し、燃費などについて、高い領域でのバランスを持ち高い実用性を持つものの、1990年代半ば以降、その人気・需要は、クロスオーバーSUVやミニバンに転じている傾向が強い。こうした新しいジャンルの車種とステーションワゴンとの境界は現在、非常にあいまいになっている。